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小林カツ代さん

子供の頃からその存在はもちろん知っていましたが、改めてその魅力に取り憑かれたのは、会社員時代のことでした。帰りにふと立ち寄った本屋で、エッセイ本を見つけたのです。「カツ代ちゃーん!」というタイトルでした。
 
何の気なしにページをめくっていたら、あっという間にその世界に惹き込まれて、気づくと涙がこぼれていたのです。あわてて涙を拭い、ひと呼吸してからすぐにレジに向かいました。帰って一気読みし、また泣きました。
 
それまで、料理は好きでしたが深く考えることはなかった。こんなに色々なこととつながっているのかと、驚きと感動が走りました。そして、戦争を知っている世代からの未来に向けたメッセージが初めてすっと心に入ってきたようにも感じました。それは等身大で語られていたからかもしれません。
 
 
もちろん、楽しく実用的なエッセイもたくさんお出しになられています。レシピ本も含めるとその著作は200冊以上あるようで、今もコツコツと集め続けています。どの本にも共通するのはとても温かく明るく、大胆なのにたおやかで美しい手仕事ぶりと、真摯で一本筋の通ったカッコいいお人柄が伝わってくるところです。言いにくいこともきちんとハートから書く勇気、そして忙しい人の立場を考え抜いて大胆かつ的確に再構築された新しい家庭料理レシピの数々。
 
動物愛護や国内外でのボランティア活動もされておられ、その魅力はとても書ききれませんが、働く女性時代の黎明期を背負って大活躍されたカツ代さんは、家庭料理の価値を高め豊かにしたのみならず、その後の料理研究家さんたちの道をも切り拓いたのだと思います。
 
 
ここからは余談?ですが、私はカツ代さんの出汁の取り方が大好きです。昆布は少量で(だからこそ)入れっぱなしで煮立てる方がうまい、鰹節も同じくたっぷりは使わないからある程度煮立てないと味が出ない。最後にギューッと絞る。時間もお金も手間もかかる料亭のやり方なんて、毎日の家庭料理に合うわけがないと…そしてこんな基本的なことをお店基準を正統にして、敷居を高くするなんて!面倒ならインスタントを買え、という陰謀ではないか?とさえ勘繰る彼女の姿勢は痛快です。
 
ほうれん草を茹でるときも、茎じゃなくて葉っぱの方からぎゅっとお湯に入れちゃうんです。やりやすいことこの上ない!素晴らしいのです。一度ひっくり返して再沸騰したらおしまい。あとはセオリー通り、冷たーい水にさらして絞ります。考えてみれば茹ですぎを感じるのは茎の方なんだから、むしろ成功率が高いです。で、おひたしとして食べる場合は、まな板の上で切ってからまんべんなく手でほぐし、下味としてほんの少しの醤油(できれば薄口)を振ります。これだと多少の保存が効くし便利で、揃ったおひたしは最近食べてないですね。もちろん立てて盛ったものは綺麗ですけど、味はこっちの方がみんな平等な感じで私は好きです。
 
推奨されている鉄フライパンも好きになりました。手入れが面倒?大丈夫なんです!使用後に油を塗り込むとホコリがつくから、彼女はやらないのです。たわしで洗って熱しておしまい。私は使うときによーく熱して(コツ)油を多めに引き、火を消して拭き取って使っています。もやしやピーマンなんかは手順を省略して、油をかけてコールドスタートもOKです。全然難しくなかった。それに買い替えがいらないストレスフリーな感じと、お料理してるんだ!と言う気合いが入るのが頼もしい。味ももちろん!IH用もありますよ。
 
テフロンも便利で好きだけど、焼きそばや餃子、適量でない余り物チャーハンの時くらいにしか使わなくなっちゃいましたね。お陰さまで手持ちのテフロンも長持ちです(笑)意外と良い共生関係のようで可笑しくなります。
 
 
初めての方にもし一冊選ぶとしたら、「手料理上手の暮らしメモ」を挙げます。古本になりますが、時代を超える素敵な本です。
 
 
 

初代はボロボロになるまで愛読し、画像は2代目です